
〜スタジオ〜
風戸:今日は「イ草農家リポート」。
先週は畳表にならず処分している短いイ草がタイへ渡って活用されているという話をお届けした。生活の洋風化や中国産が入っていることで国内のイ草、国産のイ草は低迷している。作付面積、収穫量、農家個数は年々減少。
それぞれがピークだった1989年(平成元年)当時の5分の1の水準にまで落ち込んだ。熊本県内のイ草農家は、2006年度は九州農政局の調べで973戸と1000戸を割っている。
しかし、その中で残ったイ草農家は奮闘している。
八代市鏡町のイ草農家、岡初義さんを訪れた。岡さんのところでは短いイ草を使ったイ草製品をつくっていた。
〜リポート〜
風戸:私は八代市鏡町のイ草農家、岡初義さんのお宅にお邪魔している。岡さん、こんにちは。
岡:はい、こんにちは。
風戸:岡さんのお宅の畳の部屋に、今、座っているところだが「畳の間」というのは、やはり落ち着きますね。
岡:そうですね。日本人ならではの空間ですからね。
風戸:玄関のところに(イ草の)タペストリーやイ草をそのまま花びんに刺した様な形で飾ってあった。インテリアにも使われているのだろうか。
岡:畳からちょっと脱却しよういうことと、飾る世界をつくりたいなと思って畳表にならない部分は飾るということでドライフラワーやタペストリーとして利用した。
タペストリーは、中次ぎ表ということで一応つくった。

風戸:インテリア用に、短いイ草で商品を出しているんですね。
岡:これは農機具(販売)の兄ちゃんがうちに来たのがきっかけ。イ草は全部泥染めしていたが、うちは十年ぐらい前に止めた。止めた時に、たまたま選別した残りの短いイ草を庭先に置いていたら、その農機具の兄ちゃんが「これ飾りにいいですか?」と持って行った。
それで、持って行って1週間したら「部屋の中がとにかく臭いがよくて農機具の油の臭いなどがなくなった」と言われて「これは飾ることができるんだ」と思った。これをつくるのに2年ぐらいかかった。
一応、自分の「鏡」ということと「鏡町」とアレンジして「香雅美草(かがみそう)」という名でつくった。
風戸:香る、雅、美しい草で「かがみそう」ですね。
岡:そうです。
風戸:私も、その香りを今嗅がせてもらってもいいでしょうか?
岡:はい。
風戸:これが「香雅美草」ですね。
あっ!本当にいい香りですね。
岡:抹茶に近い(香り)でしょう?
風戸:抹茶に近い香りですね。
岡:この香りに自分たちも気づいたのは乾燥して日にちがたってからなんですよ。
最初、乾燥する時期から出すと甘い香りで、半年ぐらいすると水分と折り合いがついて発酵じゃないが、お茶の香りになる。
この前、中学校の子どもたちがうちに来たときに、いろいろ話したら、ある子どもが「葉緑素の臭いがお茶の臭いじゃないんですか?」って言ってきた。
そのときに「あっ!そうだよね。」という話になって中学校の子どもは凄いなと思った。
(香雅美草は)最初の半年ぐらいは、そんなにお茶の臭いにはなっていなかった。
大体半年〜1年すると熟成したというのかなということで、これはもう凄いことである。
これをいろいろな友達や知人などに配ると、部屋の臭いが畳替えしたような感じになるとか、アロマ効果と一緒にいろいろな臭いを取るといわれる。
変わったところでは、トイレにも飾ると脱臭するみたいで大体3ヶ月ぐらいはいいと言っていた。
〜スタジオ〜
風戸:岡さんのところでは独自に、(畳表にならず)処分している短いイ草を使って「香雅美草」という商品をつくった。
イ草が束になっていて直径約5〜6センチになるが、たっぷりとした束でインテリアとしても非常に素敵だなと思う。
我が家にも実は飾っているが、とてもいい香りがしている。
ところで畳表にならずに処分されているイ草は、県内に4千トンほどあると言われている。
この短いイ草についての利用法など岡さんにさらに伺った。
岡:長さが1メートルより短いイ草は、ほとんど廃棄処分になっている。
自分の場合は「香雅美草」というドライフラワーをつくっているが、他の人たちは染土を使っている以上は、他の利用価値としてはあるんだろうけれども、それを誰かが拾ってくれない限りはない。
今、思っているのは畜産の堆肥になればとは思っている。
それがアロマ効果もあるので牛の肉質が変わるなど牛乳、ミルクも変わるんじゃないかと思う。
しかし自分たちがどんなに頑張っても、企業的な人たちから救ってもらわないと多分…うーん…
風戸:そこまでというのは、なかなか難しいようだ。
岡:八代で廃棄処分が4千トンぐらいあると言っていたので難しいと思う。
風戸:それ(廃棄)は収穫量のどのくらいだろう。
岡:大体2割くらいは廃棄があると思う。
畳表が売れない人は、3割ぐらいは、いっていると思う。
今、安物が売れないので、ひどい人は1メートル10センチぐらいから下は廃棄処分していると聞いている。
風戸:つくっても、廃棄もだいぶ出ているのが現状のようだ。
岡:なかなか売れない。つくったはいいが、あとは販売ルートである。
〜スタジオ〜
風戸:つくったはいいが販売ルートが悩みと、考えても商品になっても、その辺りがなかなかうまくいかないというジレンマがあるようだ。
さて、イ草農家が減っている現状については、どんなことを考えているのだろう。
岡:残った人は意欲があるので、そういう仲間とイ草の良さ、薬草であるイ草のアロマ効果など、そういうものを一般の人に知ってもらいたい。
多分、畳は贅沢な敷物である。薬草で寝ているのでやっぱり贅沢な敷物ですよね。
そういうイメージを教えていくなど、仲間達と話し合いをしていていきたい。
風戸:今(イ草を)やっている方たちは非常に意欲があり、どんどんいろいろなことをPRしていこうということだ。
農家の方たちも、畳屋に卸すだけではなく自分たちで独自に動いている方が多いのだろうか。
岡:農家が動くよりも畳屋さんが動いているみたいだ。
結局、農家はいつも農作業をしているので、畳屋さんと接する機会がないが、畳屋さんたちが自分たちの時間が空いている忙しくないときの土曜日曜は、よく来ている。
うちも先々週、3件ぐらい来た。
うちは年間100件ぐらい畳屋さんが来る。
風戸:作業をご覧になるんですか?
岡:そうですね。一番末端の仕事を見てイ草農家の頑張りを畳屋さんは一般消費者に伝えるという方向で、今、前とは全然違って変わってきた。
風戸:連携をしていこうと動いてきているのだろうか。
岡:そのようだ。売れなくなったからどうやって(売ろうかと)、イ草農家の畳表という、何て言うのかな…物語などを今、売るという感じになっているみたいたである。
風戸:農家としては向こうの方が来るのは、作業があるので表に出られない分いいですね。
岡:そうですね。向こうから来てもらって農家では家に泊まって、そこで夜にイ草談義などやっている人もいるみたいだ。うちも知っている畳屋さんは泊まる。
農作業をしたり、実体験をやると、その思いなどが伝わって、こんなに畳って凄いんだと感じられるみたいですよ。
やっぱり“百聞は一見にしかず”で経験した人には勝てないんでしょうね。
聞くよりも見るがいいって言っていた。
〜スタジオ〜
風戸:八代市鏡町のイ草農家、岡初義さんの話だった。
前向きな話ですね。
だた、岡さんは周りのイ草農家を見ていても、いつまで続けられるのだろうかと不安がって機械の購入をためらったりしていて、メーカーは痛いだろうと言っていた。
イ草に関わる仕事全てがどうなってくのか不安があると話していた。
畳文化を保てるのかという不安もあるようだ。
皆さんは家にある畳の産地はどこかご存知ですか?
どうやって選んでいますか?
畳表にもトレサビリティーがある。
国産のものは、どこの誰がつくったかが分かる。
これ以上、販売量が減っていくと畳文化そのものを保つことも、もしかすると難しくなるのかなと感じた取材だった。
イ草農家リポートをお届けした。
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